世界はフィクションでできている

B:時代に応じて娯楽も変わる。これはどういうことかわかる?

X:例えば、現代は旅をしたり、買い物を楽しんだりってことが多いよね

B:しかし、旅をすること、買い物を楽しむことは昔はなかったんだ。古代エジプトの時代にはエジプトの富裕層が異文化を楽しむため、バビロニアに行くことはなかったわけだ。代わりに、彼らは大きなピラミッドを作ったのかもしれないからね。

X:旅を楽しむようになったのは最近のことだもんね

B:対して現代のような消費社会も昔にはなかったんだ。

X:消費は悪いこととされていた時代もあったみたいだからね

B:実は、現代の旅を楽しむという風潮は西洋の「ロマン主義」から来ている。ロマン主義は人生を楽しむには様々な経験をするべしといったことを伝えている。そして、消費社会の根本は幸せになるにはたくさんの消費を行いなさい、といった考えに根ざしている。

X:その結果が現代のありさまなんだね。となると、資本主義もこれに大いに関わっているんだね

B:生物的な欲望を除き、私たちの欲望は時代の流れのなかで生まれたフィクションによって変わるんだ。実際に、西洋の「個人主義」が広がるにつれて、家を建てるとき、子供部屋が作られるようになった。昔はそんなものなかったのに、今は部屋に入るのにノックさえする必要が出てきたよね。日本の古い民家に行くと、ない家が多いのが分かるよね。

X:つまり、時代によって人々の信じるものが変わり、それが社会のいたるところで反映されていると。そして、それは物質的だけでなく、人間の心の中でも息吹くってことなんだね